ロビーに入った瞬間、
言葉にしなくても分かることがある。
装備の組み方に無駄がない。
立ち位置が早い。
開幕の一手に、迷いがない。
「あ、この人、めちゃくちゃ上手いな」
その認識が生まれた瞬間、
胸の奥が、きゅっと縮む。
変なことはできない。
足を引っ張れない。
期待を裏切りたくない。
まだ何も始まっていないのに、
いつの間にか、自分の中でハードルだけが上がっている。
俺はこの感覚を、
何度も味わってきた。
上手い人と狩るのが嫌だったわけじゃない。
むしろ、学ぶことも多いし、安心感もある。
それでも——
上達者がいる部屋ほど、
呼吸が浅くなる夜が、確かにあった。
この息苦しさは、
PSの差そのものから来ているわけじゃない。
もっと言えば、
「上手い人が怖い」からでもない。
正体はもっと静かで、
もっと内側の話だ。
それは、
期待を察知してしまう感覚と、
自分を評価してしまう癖が、
同時に立ち上がる瞬間。
上手い人ほど、
何も言わないことが多い。
指示もしない。
文句も言わない。
ただ、淡々と狩りを進める。
だからこそ、
こちらが勝手に想像してしまう。
「この人の基準に、
俺は届いているだろうか」
実際には、
そんな評価は存在しないかもしれない。
それでも、
自分の中で始まった比較は、
簡単には止まらない。
息が詰まるのは、
誰かに責められているからじゃない。
自分で自分を、
ずっと見張ってしまうからだ。
この記事でわかること
- 「上手い人が怖い」と感じてしまう心理の正体
- 息が詰まる原因が、PS差ではない理由
- 同じ部屋にいても、自分を追い込みすぎない考え方
上達者がいる部屋で感じる息苦しさは、
弱さの証明じゃない。
それは、
狩りを雑にやりたくない人間が、
無意識に背負ってしまう緊張だ。
この先では、
なぜその緊張が生まれるのか。
どうすれば、同じ部屋で肩の力を抜けるのか。
体験と感覚をもとに、
一つずつ、言葉にしていく。
上手い人が怖いのは、失敗が許されない気がするから

上手い人がいる部屋で感じる怖さは、
叱られる不安じゃない。
露骨な言葉を向けられる想像でもない。
「期待を裏切りたくない」
その気持ちが、静かに重くなる。
この人と組むなら、ちゃんとやらなきゃ。
迷惑をかけちゃいけない。
せっかくの上手い狩りを、崩したくない。
そう思った瞬間から、
狩りの基準が、少しだけ変わる。
失敗は学び、じゃなくなる。
被弾は事故、じゃなくなる。
「やってはいけないこと」に、
すり替わってしまう。
乙ったらどう見えるだろう。
一手遅れたら、内心どう思われるだろう。
あの人の時間を、奪ってしまうんじゃないか。
実際には、
何も言われていない。
誰も責めていない。
それでも、
頭の中では、もう一つの狩りが始まっている。
「評価される自分」を、
常に横で見張っている感覚。
この状態になると、
モンスターより先に、
自分の動きが気になり始める。
攻めるより、無難を選ぶ。
試すより、失敗しない道を探す。
それは、弱さじゃない。
サボりでもない。
上手い人が怖くなる理由は、
劣等感じゃない。
「期待に応えたい」という、真面目さだ。
ちゃんと狩りたい。
空気を壊したくない。
誰かの時間を、無駄にしたくない。
そう考えられる人ほど、
上達者の隣で、
呼吸が浅くなる。
だから、この怖さは、
直すべき欠点じゃない。
狩りに誠実であろうとした人が、
一度は必ず通る場所だ。
次に必要なのは、
自分を奮い立たせることじゃない。
この真面目さと、
どう距離を取るか
その視点だ。

本当に上手い人ほど、失敗を知っている
ここは、誤解されやすいところだから、
はっきり言っておく。
本当に上手い人ほど、
事故を、嫌というほど経験してきている。
被弾も、乙も、
一度や二度じゃない。
数え切れないほど、やってきた。
だからこそ、
彼らは知っている。
狩りは、必ず崩れるということ。
どれだけ準備しても、
理不尽な一撃は、突然やってくる。
そして——
崩れたあとに、
どう立て直すかが、
本当の勝負だということを。
上達してきた人ほど、
失敗に過剰な意味を与えない。
乙は、終わりじゃない。
被弾は、評価じゃない。
ただの出来事として受け取り、
次の手を考える。
それができるのは、
失敗を「通ってきた道」だと、
身体で知っているからだ。
逆に——
狩りの空気を重くするのは、
上手さじゃない。
ミスに過敏になること。
成功だけを基準にすること。
余裕のない視線を向けてしまうこと。
それらは、
経験不足というより、
心の余白が削れている状態だ。
息が詰まる部屋の特徴
- ミスのあとに、説明のない沈黙が流れる
- 成功した行動だけが、暗黙に評価されている
- チャットが必要最低限で、感情の余地がない
こういう空気は、
「上手い人がいるから」生まれるんじゃない。
失敗を扱う余裕が、
その場にないときに、生まれる。
だから覚えておいてほしい。
上達者そのものが、
あなたを苦しめているわけじゃない。
息が詰まる感覚があるなら、
それはPS差じゃなく、
環境の相性の問題だ。
そして——
合わない空気から、距離を取る判断は、
逃げじゃない。
狩りを長く続けるための、
かなり健全な選択だ。

息が詰まるのは「役割を誤解している」から
上手い人がいる部屋に入った瞬間、
無意識に、こんなスイッチが入ることがある。
「自分も、同じレベルで動かなきゃいけない」
その瞬間から、
狩りは少しずつ息苦しくなる。
でも——
ここで、一度立ち止まって考えてほしい。
マルチは、
全員が同じ役割を果たす場所じゃない。
むしろ逆だ。
マルチは、役割がズレているからこそ成立する。
火力を出す人がいる。
立ち位置を安定させる人がいる。
崩れそうな場面を、静かに支える人がいる。
そのどれもが欠けると、
狩りは一気に不安定になる。
- 回復や粉塵で、全体の余裕を保つ
- ヘイトを取って、モンスターの向きを安定させる
- 罠や閃光で、事故が起きる前に流れを切る
これらは、
ダメージ表には残らない。
でも、狩りの呼吸を確実に整えている。
上手い人がいる部屋で、
無理に同じことをしようとすると、
自分の役割が見えなくなる。
だから息が詰まる。
上手い人の火力を、
安心して出させる役がいるだけで、
狩りは驚くほど楽になる。
それは、遠慮でも妥協でもない。
ちゃんとした参加の仕方だ。
同じ動きをする必要はない。
同じ結果を出す必要もない。
その場で、
自分が担える役割を引き受ける。
それが分かった瞬間、
上手い人がいる部屋は、
「怖い場所」じゃなくなる。
比べなくていい。
張り合わなくていい。
マルチは、
役割を分け合う場所なんだ。

それでも息が詰まったら、距離を取っていい
考え方を整えても、
役割を意識しても、
それでも息が詰まる部屋は、確かにある。
それは、あなたの理解が足りないからでも、
慣れていないからでもない。
合わない空気は、存在する。
チャットの間。
ミスが起きたあとの沈黙。
成功だけが淡々と積み上がっていく感じ。
そのどれもが、
別に誰かが悪いわけじゃないのに、
なぜか呼吸だけが合わない。
そういう部屋に入ったとき、
無理に自分をねじ込もうとすると、
狩りは一気にしんどくなる。
「ちゃんとやらなきゃ」
「ここで抜けたら失礼かな」
そうやって踏みとどまるほど、
心は削れていく。
静かに抜ける、という選択は、
逃げじゃない。
それは、
自分の状態を把握したうえで、
これ以上消耗しない距離を選ぶ行為だ。
相性の悪さは、腕の差じゃない。
空気の違いだ。
狩りの上手さと、
居心地の良さは、必ずしも比例しない。
上手い人が多い部屋でも、
息が詰まることはある。
逆に、ゆるい部屋のほうが、
自分らしく動ける夜もある。
どちらが正しい、じゃない。
今の自分に合う距離を、
その都度、選び直していい。
合わない部屋から離れることは、
誰かを否定することじゃない。
ただ、
狩りを嫌いにならずに続けるための、
静かで誠実な判断だ。
息が詰まったら、
深呼吸できる場所に戻っていい。
狩場は、
ひとつじゃない。

読者への問い
ここまで読んで、
もし少しでも胸に引っかかるものがあったなら。
-
上手い人がいる部屋で、
無意識に呼吸が浅くなった経験はありますか? -
そのとき一番しんどかったのは、
ミスへの不安ですか。
それとも、空気を壊してしまうかもしれないという恐れでしたか? -
もし今、同じ場面に立ったとしたら、
あなたはどんな距離を選びたいですか?
うまく言葉にならなくてもいい。
整理されていなくてもいい。
コメントに、今のままの感覚を置いていってほしい。
あなたの一言が、
同じように上手い人の輪の中で、
息を詰めている誰かの背中を、
そっと軽くするかもしれない。
※この記事は、体験と心理に基づくコラムです。
特定のプレイスタイルやプレイヤーを否定・評価・晒す意図はありません。

コメント